ひみつの階段1(紺野キタ、ポプラ社)

ひみつの階段1』(著:紺野キタポプラ社)を読んだ。
女子校の古い寄宿舎が見せる不思議な出来事と、少女たちのお話。
このマンガは二つの意味で幻想的だ。
ひとつは、古い寄宿舎が起こす不思議な出来事。
突然現れるもう失われたはずの階段、別の時間から数人の少女が集まって開かれるお茶会、見える人と見えない人がいるネコ。
それらは少し不思議なものとされながらも、自然に少女たちに受け入れられている。
もうひとつの幻想は少女たちの関係性だ。
共同生活で起こりうるような衝突が、このマンガでは描かれていない。
あるいはひどく無害なものとしてのみ表現される。
あこがれならが、想像されながら、決して現実にはありえない優しく穏やかな関係という幻想。
二つの幻想を抱えながら、しかし決してリアリティがないわけではない。
一つ一つ抜き出せる少女たちの関係性に嘘くささはなく、ケンタッキーやポッキーなどのアイテムも、寄宿舎という閉じた空間で社会や時代性から浮遊しがちな少女たちを、たしかに読者と同じ時間軸にいるのだということを教えてくれる。
ひみつの階段」はあるのかないのか。
それはあるといえばあるし、ないといえばない。
この作品の少女たちも寄宿舎もまた、そのような存在のように思える。
はかなく幻想的でも確かにどこかにあると思える存在感と、しかしそこに行くことは決してできないもどかしさ。
優しく微笑ましいのに、どこか寂しさを感じさせてくれる作品。