セカイ系とは何か

セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史』(著:前島賢ソフトバンク新書)を読んだ。
レーベルとタイトルで、勝手にあまり期待しないで(偏見!)読んだのだけれど、かなりいい方に予想が裏切られた。
セカイ系という言葉の定義や使われ方の変遷や、消費される作品の変化、エヴァを基点とするオタク文化の変化について分析した本。
セカイ系というばく然とした言葉、『動物化するポストモダン』『ゲーム的リアリズムの誕生』などの東浩紀氏と『ゼロ年代の想像力』の宇野常寛氏の主張などを整理するのに役に立った。
個々の作品には深く触れず、あくまで流れを追っている感じで、触れられている作品をあまり消費していない立場ではどこまでその言及が正確なのかを判断することはできないけど、知っている幾つかの作品に対する著者の言及に違和感はなかった。
セカイ系という言葉の使われるメインの場所や、使われ方による肯定的否定的あるいは意味的な変化の整理もわかりやすいし、それを『「おたく」と「オタク」』に比しているのも面白い。
入門書としても、あるいは数冊この手の本を読んだ後に整理のためにでも読んでそんのない一冊だと思う。
なお、帯に『新世紀エヴァンゲリオンからニコニコ動画まで』と書いてあるが、ニコニコについての言及は少ない。