Twitterドラマを見たわけだけど

昨日から放送が始まった「素直になれなくて」というドラマを、リアルタイムで見た。
リアルタイムでドラマの一話を見たのは、たぶんキムタクのヒーローが最初で最後だから、実は結構すごいことだったりする、自分の中では。
このドラマはTwitterが活用されるという一点において、注目していたので、昨日は自分のTLを見ながら見ていた。
本当に良く出来きたドラマだったので、正直昨今のドラマなんて面白くないんだろうという認識を改めなければいけないと思った。
断っておくと、ストーリーは全く面白くなかった。
ドラマをほぼ見ない僕でも容易に想像ができる「下らない」ドラマの典型以上のものはなにもなかった。
Twitterが関係なければ、絶対見ないだろうということは断言できる。
しかし、Twitterを番宣に使ったという点で、もはやそのつまならいストーリーは関係がない。
むしろ、そのつまらなさを作り出している陳腐なエピソード達とキャラクター像は、ひとつの物語を形成するにはあまりにも下らないが、物語の枠外の現実に対して、極めて有用な働きをしたと考えられるからだ。
先にこのドラマのほぼ唯一の失敗点だと思える部分を紹介しておくと、Twitterの使い方について親切な解説がなかったということだ。
後で書くけど、というかさっきもちょっと書いたけど、このドラマは物語の枠外の現実(視聴者の現実)が重要で、それはつまりTwitterが利用されるということだ。
だから、Twitterってよくわからないけど、ひとまず話題だからドラマを見ようとした人に対して、その使い方を最初に伝えないと、その重要な要素が抜け落ちてしまう。
Twitterを始める上での最大の障害と言われる、登録してからフォロアーをどう増やし、どうコミュニケーションするかという部分を一話で一切省いてしまって、いきなりオフ会をしていしまっては、完全に置いてきぼりだ。
これでは、Twitterをはじめられず、ストーリーを楽しむしか無いという、極めて面白くない(と僕は思う)楽しみ方しかできない。
(しかし、もしかするとそれすらも意図的な演出なのかもしれない。
なぜなら、出演者やストーリーだけでこのドラマを見ようとする層の求めるものと、ドラマが提供するエンタテイメントの方向性は一致しないからだ。
純粋にストーリーを楽しめるのならば、Twitterは不要だから。)
さて、この点を除けばこのドラマはTVドラマとしてはほぼパーフェクトなものだったのではないか。
テレビドラマの最もスタンダードな消費のされ方は、昔ながらの形は次の日に学校や職場で話題になるということで、今だったらメールやメッセンジャーで感想をいいあったりだと思う。
ただ、前者と後者の違いは、前者が全体的な感想を含むことになる、つまり事後的な感想のまとめとしてのおしゃべり的になるのに対して、後者はツッコミ的になるということだ。
これはラジオ番組のはがきからメール・ファックスへの移行でも言われることだけど。
一話のまとまりとして再度考えた上でひとつひとつのエピソードが意味付けられる(正確には見た時点の意味の上書き)のに対して、後者は見た時の印象がそのまま発信される。
そのため、発信される内容がことなってしまう。
Twitterという極めてリアルタイム性の高いメディアを取り扱うドラマとしては、つねにエピソードについての感想が何らかの形で(Twitter、メール、メッセンジャー掲示板等)発信されることが目指されるはずだ。
そのためには、視聴者に深く考えさせるようなことをしてはいけない。
考えたらそこで発信がとまってしまうからだ。
故に、つねに突っ込みどころ満載の下らないエピソード(例えば女上司にキスを迫られたり、キャラクターの性格が極端だったり)が流される。
ストーリーがつまらないということは、それだけドラマに集中させないという効果があり、これは下らないエピソードとの組み合わせによってかなり効果を生んでいるはずだ。
もっとも効果が大きかったのは、キャラクターがTwitterをほぼ使わない、使ってもメールと変わらないというところだろう。
これは「いつTwitter使うの?」と視聴者に思わせることにより、過度に物語に没頭しないための鍵であり、ツッコミどころなのだ。
これは明らかに意識的にやられている。
なぜならば、Twitterという注目の集まるアイテムを使用することで(ほぼ唯一の売りとしながら)まさか使わないという大ボケを、ド真面目にやるはずがないからだ。
つまりTwitterでツッコミを入れながら、普段なら見ないようなドラマを見てしまった人は、まんまとこのちょっと複雑な「超つまらない、ということを利用したコミュニケーションの形成と、それに参加するためにドラマを未ざるを得ない」という心理をうまくつかれてしまったのだ。
コミュニケーションのネタの素材(ドラマに限らずテレビの番組全体がそうだと思うけど)として、極めて純度のたかい、ある意味極めて良質の(なんども書くが、ストーリーはつまらないと思う。そこに期待してはいけない)エンタテイメントドラマである。
ネタ度で言えば、たぶん「けいおん!!」とかよりもある意味すごい。
すごいぞ!フジテレビ!
公式サイト:http://wwwz.fujitv.co.jp/sunao/index.html

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蛇足
まさか大真面目に書かれたストーリーではないと思っているので、こんなことを言うのは的外れだろうけど、ああいうドラマ作っといて、オタク批判やネット批判に現実逃避論をテレビ番組で使用するならお笑いだとしか言いようがない。
もうああいうドラマが好きな人が批判するような、非難するようなアニメやマンガのリアリティと変わらないじゃん。
問題は登場人物の年齢くらいで。

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追記(15:30)
文章内で使っている「下らない」とかそういう表現は、何か「くだらなくない」ものを想定したものではなくて、特記する必要がないとか、注目に値しないという意味です。
別に特定の素晴らしいドラマあるいはアニメ・マンガがあるというスタンスから、このドラマのよくできたストーリー(というかエピソードのつなぎ合わせ)を否定しているわけではありません。
念のため。

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