日本辺境論(内田樹、新潮社新書)

『日本辺境論』(著:内田樹、新潮社新書)を読んだ。
新書大賞2010第一位ということと、『下流志向』が面白かったこと、そしてたまたま入った本屋にこの本以外読みたいものがなかったので買った。
読む前に、『どうせバカの壁国家の品格みたいな本(この二つを並べるのもどうかと思うけど)でしょ』と思ってたけど、ちょっと違った。
違ったといっても、あくまで僕個人の中でのジャンル横断的な分類がという意味だけど。
まずはじめに体系的ではなく大雑把であるという宣言があり、最後に無数の穴があると言及されているので、細かい話はたぶん突っ込む意味はない。
いろいろ気になることもあったけど(例えば、著者が想定するアメリカ人あるいはヨーロッパ人があまりにもアバウトじゃないかとか)、そこにいちいち何かを言う事は封じられている。
また、新しいことはとくにないとも宣言されているので、目新しさがないということも言えない。
ただ、それは別に、つねにその辺に転がっているような適当な評論ぽいものというよりは、いろいろな分野の著書や発言、文化からの引用であり、そこから発展的に自分で考えていくことができる。
どちらかと言えばそういうカタログ的な本で、読んだから何かが特別深まるわけではないが、本書の中で取り上げられた張良と黄石公の関係的な、弟子は師から勝手に学べ、教えていないことを学んでしまう、といようような感じだろうか。
内田氏がこの本で語る日本人論は納得できるところが多いのだけれど、それよりも、いろいろ取り上げられた例からいかになにを勝手に得るかということの方が重要な気がする。
そして、今更大声で「日本人は」というようなことを論じるということ、我々意識の薄い現代人を相手に、あえて「日本人論」を語ることの意味を考えさせられる。

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たぶん、日本論としては内容を考えるとムダに長いけれど、カタログだと考えれば長くはない。
しかし買って読むほどの意味があるのかは微妙。